国や場所によってのリハビリの違いですが、あくまでも私が見てもらったイギリス(ケンブリッジとサラセンズ)、ならびにフランス(マルセイユ)のPTの方たちについてですが、これらの方たちは、筋力を回復させることに重点をおいているように感じました。
 
日本(新須磨病院を含めて)でのリハビリは、筋力はもちろんですが、足の動きとか、バランスなど、言葉が正しいかどうかわかりませんが、機能的なものに重点を置いているような気がしました。
 
私自身、筋力が戻ってきていても、走っているときの足の戻り、蹴り、膝の上がり方など、
そういったところが今でも気になっていて、これについては、もう一度動きを思い出させるしかないようです。
 具体的にはチューブを使って、走るフォームを思い出させたりしています。

岩渕健輔さんのリハビリを語る



<岩渕さんの質問:黒字>
レッグエクステンションをしたときに、最後の10cmくらいでまったく力が入らない状態が続いている。また、どうしても手術していない足のほうでプレーしている気がする。ももの裏から筋肉を取って靭帯を再建したが、そのもも裏が肉離れしたような状態になることがよくある。

<中山先生の回答:青字>
術後から約6ヶ月間はダブルチューブ、Cybexの大腿四頭筋トレーニングを行いますが、このとき伸展角度は前十字靭帯にストレスがかからない伸展70度で制限していたため、最終伸展可動域で収縮する内側広筋が十分に働かない。このようなトレーニングを続けていた為、フルエクステンションを行った時に最終域で力が出ない状態になっています。少し時間はかかりますが、この状態は改善されます。内側ハムストリングスを採取して、再建術を行うデメリットのひとつです。大腿四頭筋とハムストリングスの筋力比(ハムストリング筋力/大腿四頭筋筋力)が低くなる、残ったハムストリングスに負担がかかることが原因です。
*上記の様な状態でスポーツ、トレーニングを行うと、頭の中では左右バランスよく行っているつもりでも、実際には筋力の左右差があるため、手術していない下肢でプレーしているような気がします。

片足スクワットやスクワット、レッグカールやエクステンションをある程度の時期からやるように言われたが、そういった大きな筋肉よりも、感覚としては肩でいうインナーマッスルのような筋肉を鍛えることが一番重要であり、その部分を鍛えないことで、後々影響がでるような気がする。スクワットなどの大きな筋力は自分がやってきた経験上、戻りやすい気がする。

下肢の
トレーニングの最善の方法は、レッグカールや、エクステンションのような単関節運動のトレーニングではなく、スクワット、ランジのような複関節運動(2関節筋)で行うのが重要です。ジャンプ、ランニング等スポーツ動作は全て複関節動作で構成されています。この動作は、大群筋の収縮によって、パフォーマンスされます。スクワット、ランジもジャンピングスクワットや、スプリットランジ等の様にジャンプやスピード、スタンスなどのバリエーションを加えると今までのトレーニングとはまた違った刺激を筋肉に入力することができると思います。
下肢にも股関節に肩のようなインナーマッスルがあります。肩関節のインナーマッスルは、上腕骨頭を関節窩にひきつけ、自由度の高い肩関節の運動方向を誘導する働きがあります。このため、肩に障害を有する方には大筋群のトレーニングよりもインナーマッスルを最初にトレーニングします。下肢のインナーマッスルである、股関節回旋筋群は、筋力強化というよりは、柔軟性を高めた方が、スポーツでのパフォーマンスは高まると思います。


現在は特に自転車のパワーマックスを使ったトレーニングをしているが、非常に効果があるような気がする。
走っていると他の筋力でカバーしてしまうが、自転車だと、右と左の筋力の違いが明確にでる。


自転車のパワーマックスなどの自転車を使用したハイスピードトレーニングでは、ランニングなどでは経験できないハムストリングスの求心性収縮(筋肉が収縮して力を発揮)がえられます。ペダリングは、踏み込み動作と引き足動作から構成されます。一般にママチャリをこぐ程度では、踏み込み動作のみで引き足は行われませんが、ロードレーサーや競輪選手のようなハイスピードペダリングではハムストリングスの収縮を意識した引き足動作が大変重要になります。しかし、このようなハイスピードペダリングのトレーニングはどの様な、自転車でもできるわけではなく、ペダルを固定できる自転車が必要になります。トレーニング後も、乳酸が蓄積し、筋肉のいい張りを感じるのでは、ないかと思います。
ランニングでは、下肢の筋肉は、遠心性の筋収縮(筋肉の弾性をうまく利用)ではねるような動作が行われる為、筋収縮のエネルギーはセーブされます。他の筋力でカバーするというのは少し違います。
このため、自転車だと、右と左の筋力の違いが明確に出ます。

<リハビリをさらに語る! 岩渕選手&中山PT>

 また、実際岩渕さんが行われてたリハビリについての疑問点を中山先生に解説していただきました。その内 容もあわせて掲載させていただきます。

<リハビリに国境あり?>

フランス、イギリス、日本の3国をわたってリハビリを続けてこられた岩渕さん、各国のリハビリの違いを以下のように語られています。