3月29日 〜友人の手術〜 

入院してから、1週間経った頃、私の前のベッドに救急車で運ばれてきた女性が、入院してきた。前に居た人は、前日に退院し、よくお世話にこられていた娘さんと仲良くなった直後だったために、少しさびしい思いをしていた矢先だった。旦那さんが付き添いで来られていて、挨拶がてら話を聞くと、交通事故で膝を複雑骨折したらしい。痛み止めを打っているにもかかわらず、かなり苦しそうでとても痛々しかった。手術を受けることになるらしいが、手術日は前日だったため、あと2日この状態で待たないといけないという。旦那さんは、とてもやさしい人で、そんな奥さんを励まし、その後、「こんな感じで動けないので、気を紛らわすためにも、話し相手になってやってください」と私に声をかけていった。そんなことならお安い御用。旦那さんが帰った後、「痛そうだけど・・・大丈夫?大丈夫じゃないよね・・」と声をかけると、「大丈夫よ。・・・でもあと2日こんな状態かと思うと・・・しんどいね」とにっこり笑いながら答えてくれた。これまたとってもやさしそうな奥さん。あの旦那さんあって、この奥さん。すごくいい感じ。この2人の子供さんはどんな感じだろう。次の日、娘さんがやってきた。とってもかわいいお嬢さん2人。1人は高校生、も1人は、短大を卒業して、4月に就職し、すぐ研修に旅立つらしい。母としては、いろいろ準備して、見送ってあげたかったのに・・とその話をするとさびしそうな顔をした。私も曲がりなりにも子をもつ母。すごく気持ちはよくわかる。でも、そんな時期であるにもかかわらず、2人ともとてもやさしく母親に接し、冗談をいいつつもいつもはしてもらっているであろうお世話を母に一生懸命してあげていた。なんていい家族。何年後かにはこんな家族になれるのだろうか?などど思いながらほほえましくその光景を眺めていた。
待ちに待った手術の日。奥さんは「手術の日、主人が楽しみにしていたお芝居があるのよ。神戸での公演をまっていたので、「いってきたら?」っていったから、主人多分来ないわ。」といっていた。私はそれを聞きつつ、(きっとご主人は病院にくるに違いない)そう思っていた。ご主人は予想通り娘さん2人と一緒にやってきた。奥さんはびっくりした様子だった。
 奥さんの手術が始まってから、旦那さんと話す機会があって、「お芝居やっぱりいけないですよね」と旦那さんにきくと、「・・・・え、そんなこといってました?いけるわけないでしょ。当たり前ですよね。なにをいうてるやら・・・」と呆れ顔。やっぱり思ったとおりの返事が返ってきた。
奥さんが手術室から帰ってきた、まだ麻酔から覚めていないようで、酸素マスクを看護婦さんがセットしていた。膝からは出血が多いらしく、管が取り付けられていた。手術前は普通に話しをしていた母親が一気に重症になったように娘さんたちは思ったらしく、
顔がこわばっていた。(無理も無い私もそう思ったし、私も顔がこわばっていたにちがいない)しばらくその状態が続いたので、だんだん心配もグレードアップしていき、とうとう娘さんたちは、泣き出してしまった。それまで、だまって奥さんの手を握っていた旦那さんはその様子をみて「お前らが泣いてどうする!」と叱った。
看護婦さんたちは慣れた手つきで、処置をされていたが、娘さんたちの様子をみて、「麻酔が覚めてないだけだから、大丈夫、でもびっくりするよね。」とやさしく声をかけていた。様子が様子だけに、私もとっても気になっていたので、「そうか、大丈夫なんや」と看護婦さんの言葉にほっと胸をなでおろした。
次の日、目が覚めて、前のベットの様子を伺っていたら、おきてるようだったので、「おはよう」といったら元気な声で返事が返ってきた。
「気分悪くない?」ときくと、「痛いけどね。気分はわるくないわ。おなかすいた」と一言。
朝ごはんもぺろりと平らげていた姿に、母の威厳を感じた。