@靭帯を切ったときの様子
ポール練習中,コースの途中でバランスを崩し転倒,腹這いで斜面を滑っているときにハイサイド(スキーが雪面に引っかかること)になり空中に飛ばされる。雪面にたたきつけられたときに片方の脚はスキーがはずれるが,もう片方の脚はスキーがはずれず雪面に強打される。そのときに「グキッ」と音がした。たいした痛みはなかったものの,しばらく(1分ぐらい)しびれた状態で脚に力が入らなかった。レストハウスで休憩後,だいぶ痛みも引いてきたので,公式練習に参加し,大会コースをフリースキーで滑る。ケガをしてからずっとワンピースを着ていたので腫れた感じはなかったが,宿舎に帰りウエアやワンピースを脱ぐとみるみるうちにパンパンに腫れてきた。10年前にACLを切るケガをしているが,そのときと比べ痛みも少なく体重もかけられるし,内出血もなかったので,たいしたことは無いという感覚だった。

A手術の内容
(どこをどのくらい切ったか、どの腱を移植したか)

右膝前十字靱帯再建術(移植にはハムストリング腱を用いた)
MRIには内側半月板にも亀裂が見られたらしいが,治っていたらしい。

B手術にいたるまでの経過
(どこで、診察を何回受けた、だれかかからどのような情報を得たなど)
2月20日,国体会場(山形県)でのケガだったため救急指定になっていた現地の病院で診てもらった。とても親切な先生で,「せっかく遠いところ来てもらっているのにケガして残念だ。これからも国体選手として頑張ってもらうためにきちんと治そう。」といってくださって,レントゲンをはじめ突然のことなのにMRIまで撮ってもらい,丁寧に診察して頂いた。診断は大腿骨骨挫傷,靱帯は大丈夫とのこと。そして最後に「私は整形外科でも手首が専門,膝の専門の先生に紹介状を書く。面識はないが,君の左膝に入っているスクリューを開発した神戸大学の黒坂先生なら徳島からも比較的近いし,間違いなく力になってくれる。」ということで黒坂昌弘先生宛に紹介状を書いて頂いた。1週間もすると痛みもなくなったので,シーズンの締めくくりになる大会に出場し,右脚をかばいながらも優勝できた。最高の形でシーズンを終えることもでき,仕事も一息ついたので,山形の先生は大丈夫ということだったけど,せっかく紹介状もあることだし久しぶりに神戸の町にも行ってみようかな,と軽い気持ちで黒坂先生の診察を受けることにした。そして黒坂先生の診察は前十字靱帯断裂。一瞬あっけにとられた。スポーツをやめ,読書や音楽鑑賞に趣味を変えるのなら手術の必要はない,今のままスポーツを続けたいのなら手術が必要とのことだった。迷わず後者を選んで「お願いします。」と言った。

C入院してから、退院までの簡単なスケジュール
1日目 午前中入院(新須磨病院) 午後手術
2日目〜4日目 曜日の都合もあり何もなし,ベットの上で自主的にリハビリ
5日目 リハビリが始まる 6日目〜12日目 
    日を追うごとにリハビリはハードになる
13日目 転院(神戸大学病院)
2週目 午前中3時間のリハビリ
3週目 午前中3時間,午後2時間のリハビリ
4週目 退院

Dリハビリの経緯

(特にどれくらいで、どの程度の運動ができるようになったか)

手術当日 傷がうずいてほとんど寝られない。
しかし痛み止めを飲むまでもなかった。
手術の次の日から1日8時間以上のアイシングを毎日する。
2日目 ベッドの上で脚を投げ出し,脚(膝)を伸ばすリハビリをする。車いすでの移動。
3日目 痛みもだいぶ落ち着いてきた。ベッドの上でのリハビリ。車いすでの移動。
4日目 松葉杖での移動が許可される。ずっと待っていたがリハビリには呼ばれず。
5日目 初めてリハビリ室に呼ばれてのリハビリ。約1時間くらい。
6〜7日目 種目も増え,上半身のトレーニングも。今までは伸ばすリハビリばかり。
 2週目 初めて曲げるメニューが。このとき約80°くらい。片松葉になる
 3週目 エアロバイク,スクワット,バランスボードなど。約110°くらい。 松葉杖なくなる
 4週目 サイドステップ,スクワット各種。約125°くらい。 術後4週間で退院
 5週目 1週間に3回,通院してリハビリ。片足でのスクワット・カーフレイズ。
 6週目 1週間に3回,通院してリハビリ。片足でのスクワット・カーフレイズ。
 7週目 7週目以降,週1回通院してのリハビリ。レッグカール・エクステンション。
 8週目 7週目と同じ。伸びは順調,曲げがやや突っ張る。
 9週目 片足でレッグカール・エクステンション。
10週目 術後初めて踵がおしりにつく
11週目 ルームランナーで15分間のウォーキング
12週目 先生の許可無く装具をはずして毎日の生活を送る。
13週目 装具をしていないのが先生にばれる。しかし,階段程度なら不安なし。

E使用した装具など
病院の先生(神戸大学病院)指定の装具

F今の状態、心がけていることなど
先生の許可はまだだが,普通の生活なら装具なしでもほとんど不安はない。膝も安定している。腫れ,水がたまることもなく,曲げ・伸びとも順調とのこと。正座も可能。(姿勢は不自然) 装具をつけての片足での運動を心がけている。このとき「KAAZ(カーツ)」というゴムベルトで太股を縛ってトレーニングすると,次の日の筋肉疲労が大きい。効果があると信じている。リハビリの後には必ずアイシングをすること。

Gこれから、治療を受ける人へアドバイス

前十字靱帯が切れた状態では,常に膝崩れや膝の不安定感に悩まされるし,今まで通りの生活(スポーツ)ができない。この生活で支障がないのならともかく,私は1日でも早く今まで通りの生活(スポーツを含め)に戻りたかったので手術を即決した。家族や職場の都合もあるが,許してくれるのであれば再建の手術をした方がよいと思う。私は10年前にも前十字靱帯再建術を受けたが,理論や器具,技術の進歩で,そのときよりはるかに体にかかる負担は少ない。痛みもたいしたこと無かったし,社会復帰への時間も短縮できている。信頼できる先生にきちんとした手術をしてもらい,リハビリの先生の言うことを聞いて充実したリハビリをすれば必ず回復します。 私の場合,遠く離れた地でケガをしたにもかかわらず,紹介された先でたくさんの先生に診てもらい,親切にして頂いたのが本当にありがたかった。

CASE 3