Q7.手術後どのくらいでどの程度のスポーツに復帰できるという目安はあるか?  

この問題に関する回答は非常に困難です。というのは、どの段階でどのレベルのスポーツに復帰できるかは、個人の状態によって大きく異なる事があります。また、先ほどにもありましたが、なぜACL再建術を行なった際に復帰までに非常に長い期間が必要かというのは、移植した腱がある程度の強度に回復するのに時間がかかるためです。移植した腱は手術までは当然周囲の組織から血液の循環を受けて栄養されていますが、一度採取して、大腿骨や脛骨の骨トンネルにいれた最初はどこからも栄養されていません。これが徐々に周囲から栄養を受けて腱が熟成するには1年経過した状態でも、正常のACLには及ばない状況です。ですので、世界中でこの熟成の期間を短縮させる方法がないものかを研究されていますが、2003年の時点では実際の患者さんに応用可能ではっきりと効果のある方法はまだ発見されていま。ですので、A病院では復帰までに8ヶ月と言われて、B病院では1年と言われて、なぜこんなに差があるのかについて疑問を持っておわれる患者さんも多いと思いますが、A病院の方が特別な手術をしているわけではなく、一応の目安として説明するのに若干の差があるのです。最終的には、患者さんの状態やスポーツの種類やレベルを検討して復帰時期を決定しています。

、一般的に手術後6ヶ月でスポーツ復帰とよく言われていますが、これは再建靭帯の強度が6ヶ月で術前に近い状態に上がるためです。しかし時間経過(日にち薬)だけでの術後6ヶ月では、日常生活に支障出ませんが、スポーツ復帰は無理です。では何を基準にするかというと、今のところゴールデンスタンダードはありません。施設によっては、大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力を体重で割った数字(大腿四頭筋2.5Nm/Kg、ハムストリングス1.5Nm/Kg)や、有酸素能力を指標にするところもあります。
当院でも、この筋力の指標をベースにトレーニングしています。筋力トレーニングは、体重負荷状態での内容のメニュー(スクワット、フロントランジなど)を主に行い、フォーム作り(股関節を軸と意識した)→低負荷高頻度→高負荷低頻度→低負荷ハイスピードへと進めていきます。どの段階でも痛みなく行えることが大切です。スポーツ復帰への仕上げ段階として、患者さんが行っていたスポーツでの基本動作や、競技特有の動作を1/3スピード→1/2スピード→2/3→スピードフルスピード
で行っていき、痛みや、不安感なくフルスピードまで出来れば完全復帰です。しかし、筋力も回復し、体力もついた、練習を行っても痛みや不安感がないのに、以前の怪我する前とフィーリングが少し違うことを経験することがあります。これらの改善には2,3ヶ月かかることがあります。
以上の事をまとめると、
@手術後6ヶ月を経過して再建靭帯強度が得られていること。
A筋力がある程度回復していること。
B股関節を意識した重心コントロールや拇指球(足親指)荷重が獲得されていること
C患者さんが行っていたスポーツでの基本動作や、競技特有の動作を痛みや不安感なくスルスピードまでできること

が、あげられます。
筋力トレーニングの原則には、過負荷の原則と漸進性の原則があり、これら原則にのってトレーニングします。最初に重い、きついと感じていた負荷もしばらくトレーニングを行うときつく感じなくなります。この時期が強度を上げていく時期です。強度を上げずにトレーニングを継続していても、筋力アップは望めません。ただし、負荷を上げたときに痛みや違和感が出る時には我慢して行わずに理学療法士に相談してください。