Q4.治療後、次のような症状が出るのはどのようなことが考えられるか?
  @手術をしていない方の膝の状態が悪くなった。
  A多少しびれがある。(足を組むと以前より早く足がしびれてくる。)
  B多少膝の不安定感が残る(オーバーワーク時には腫れることも)
 

@一般的に考えられるのは、術(手術したほう)側をを意識して、無意識でかばうためにストレスを受け痛み、張りだるさがでることがあります。また、反対側(手術していないほう)の膝関節に、潜在的な
(気づいていない)障害があった場合には、激しい疼痛が出ることもあります。なので、ただ単純に
反対側の膝関節の状態が悪くなるということはありません。
これは*コンディショニングにすることで改善されます。コンディショニング方法については、理学療法士に相談ください。
*具体的には、手術していないほうの膝にもアイシング、ストレッチング、マッサージなどのボディーケアや筋力トレーニングを術側と同じように行うことです。

A再建術は関節鏡を使用するため、小さな手術創しか残しませんが、その時目に見えない表在神経を傷つけてしまいます。このことから関節鏡、*グラフト創周囲にしびれ感や、感覚消失が生じることがあります。これらは、リハビリよりも時間経過(日にちぐすり)である程度までは改善されますが、残念ながら、多少は残ってしまいます。他に考えられるのは、手術ストレス、筋力トレーニングによる筋肉痛、異常歩行によるメカニカルストレスの筋肉痛により足を組んだ時に筋肉が阻血状態(血液の循環が十分でない状態)となりしびれるのではないかと考えられています。これもコンディショニングすることによって改善されます。
*グラフト創・・・再建靭帯に使用する半腱様筋を採取する為の手術創です。
*メカニカルストレス・・・人間の運動器(骨、関節、靭帯、筋肉)は、運動を円滑に行うように効率よく機能しています。しかし運動器が損傷されたり外科的な治療を受けると、痛み腫れなどが生じ、関節の動きが制限される、安定性がなくなる→代償として隣接関節に負担がかかる、余分な筋収縮が必要になる、筋肉が萎縮し柔軟性が低下する、筋疲労が著名となります。このため、動作を行うことで正常な運動器の機能は遂行されず四肢、体幹を通じて緩衝されなかったストレスが運動器に生じます。

B
術後2,3ヶ月間は、筋力低下(アンバランスも含む)、恐怖心や術後炎症の持続により、十分に荷重できなかった場合は、歩行時や階段降り、坂道の下りで多少膝の不安定感を感じることがあります。これらは、コンディショニングすることで改善されますが、リハビリプログラム(筋力トレーニング)が順調に進んでいっても、不安定感が残るようであれば、靭帯の緩みが考えられます。このようなときは医師の診察を勧めます。

ACL再建術には様々な歴史があり、現在もさらなる向上を目指してたくさんの人達がこの問題に取り組んでいます。しかし、また100%正常のACLと同じ靱帯を再現する事は困難であり、若干の膝のゆるみが残存しているのが世界的な現状です。近年、より正常のACLに近い再建術を目的としていくつかの試みが報告されており、当院での手術も出来る限り世界中で報告されているupdateな知識と技術を取り入れながら、よりもと膝関節に患者さんが感じてもらえるような手術を行いと努力をしております。また、再建した靱帯だけではなく、周囲の筋力の回復も不安定感に影響を与えますので、術後の理学療法が重要となります。